第1話:決起! そして河川敷へ(990717)
33歳で一度ラグビーを降りた。
あの頃は、もう十分だと思っていた。
日曜は競馬中継を眺めながらゴロゴロし、
当たらない予想ソフトをいじっては、
「まあ、こんなもんだろ」と自分に言い訳していた。
けれど、退屈というのは不思議なもので、
ある日ふと胸の奥で、
“もう一度、あの河川敷に立ってみるか”
そんな火が小さく灯った。
—
所属していたサンデーバーバリアンズは、
江戸川や荒川の河川敷で春のリーグ戦を戦ってきた草ラグビーの寄せ集め。
35歳を越えたロートルたちが、
“まだやれる”と信じて集まる、
どこか哀しくて、どこか誇らしい場所だった。
ホームチームの人数が揃わず、
存続の危機が迫っていた。
そのとき、
「軟弱者のゲンゲンも、そろそろ決起しなければ」
そんな声が、
自分の内側から聞こえた。
—
午後2時集合の河川敷。
久しぶりに行ってみると、
ロートル5人、現役6人。
少ない。
けれど、
風の匂いも、土の感触も、
昔のままだった。
キャプテンがロートル仕様のメニューを組んでくれたおかげで、
アゴを出しながらも、なんとか走れた。
汗が目にしみた。
背中が重かった。
でも、心は軽かった。
—
練習後は車でまっすぐ帰ったが、
来週は銭湯に寄って、
赤提灯をくぐろうと思った。
独身の頃のように。
二日後に筋肉痛が来るのはわかっている。
それでも、
久しぶりに“生きている”と思えた一日だった。
そしてこの日を境に、
白パンツ無頼控えの物語が静かに動き始める。