赤パン33ドットコム

ボールを持ったらとにかく突っ込め!

第7話:魚河岸小僧の青春譚

   

築地での仕事は、まさに「ブルーワークの極み」だった。

早朝はセリ落としたマグロをフォークリフトで積み込み、

セリ場が片付く頃には、岸壁に冷凍マグロ船が入港してくる。

この入札では、会社として何かしら落札していたので、

水揚げが終わるまで現場に立ち会うのが日課だった。

吊り上げられるマグロの冷気。

船倉から吹き出す凍った空気。

作業員たちの怒号と笑い声。

そのすべてが、若い身体に刻み込まれていった。

集めた原料マグロは、

豊海水産埠頭や川崎大師の冷凍倉庫へ入庫する。

そして、マグロ船の水揚げがない日には、

4トンの保冷車に乗って築地や門前仲町界隈の「切り身屋さん」を巡った。

給食や弁当のおかずになるカジキやオキサワラの原料を、

ラグビーで鍛えた背筋を総動員して、

手鉤を使い、汗だくになって運び込む毎日だった。

大口のロットは運送屋に任せていたが、

相模原や川口あたりまでは、

自分で4トン保冷車を走らせていた。

若かった。

身体が動いた。

動けば動くほど、

「自分はまだどこへでも行ける」と信じていた。

大学ラグビーで叩き込まれた練習量。

身体の奥に残る“走り込み”の記憶。

仲間とぶつかり合った日々の熱。

それらすべてが、

築地のブルーワークと不思議なほど相性がよかった。

汗をかき、

荷を運び、

背中で仕事を覚える。

そんな毎日が、

いつしか“青春”と呼べるものになっていた。

だが、その青春は、六月のある夜に大きく方向を変えることになる。 新宿・厚生年金会館。 そこで開かれた、わが母校の「京浜支部総会」だった。

下関にある小さな大学だが、卒業生の多くは日本の胃袋を支える京浜地区に集まっていた。 会場は、水産業界の最前線で戦う先輩たちの熱気と、懐かしい訛りで溢れかえっていた。

そんな喧騒の中、私は立ちすくんだ。 そこにいたのは、大学時代、**絶対的な存在として君臨していた四年生の“神様”**だった。

その再会が、私の運命を大きく揺さぶることになる。

 - オールバッカス物語