赤パン33ドットコム

ボールを持ったらとにかく突っ込め!

🏁 第一章・エピローグ:潮風の中で始まった物語

   

築地で働き始めたあの春から、

私の毎日は潮風と生臭い作業服の匂いに包まれていた。

勝鬨橋の朝に始まり、

セリ場の喧騒に揉まれ、

黒皮カジキの重さに背筋を軋ませ、

フォークリフトの恐怖に身をすくませる。

夕暮れの勝鬨橋では、

働き終えた身体を昭和の灯りがそっと包み込んでくれた。

その合間に、

彗星のように眩しい存在とすれ違い、

重力を持った巨星の背中を目にした。

築地という場所は、

ただ魚を扱うだけの場所ではなかった。

若い身体に、

時代の匂いと、

大人たちの背中と、

自分の未熟さと、

そして“これから始まる何か”を——

静かに刻み込む場所だった。

汗をかき、

荷を運び、

背中で仕事を覚える。

気づけばそれが、

“青春”と呼べるものになっていた。

潮風の中で始まった物語は、
ここから静かに、しかし確かに新しい季節へと向かっていく。

六月の夜——新宿の厚生年金会館での再会。
あの「御意!」が、私の人生の軌道を変えることになるとは、
この時の私はまだ知らなかった。

 - オールバッカス物語