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🌠 第5話:昭和の彗星とすれ違う

   

勝鬨橋の朝と夕暮れの表情にも慣れ、

魚河岸小僧としての生活がようやく身体に馴染んできた頃だった。

私の住む勝鬨2丁目のワンルームマンションには、

もうひとつの“物語”が潜んでいた。

2階には、当時絶大な人気を誇ったアイドルのファンクラブ事務所が入っていたのだ。

その存在を知ったのは、ある早朝のことだった。

4階で乗り、2階でエレベーターの扉が開くと、

そこに立っていたのは——

まるで夜明け前の空を横切る彗星のように眩しい女性だった。

一瞬、息が止まった。

テレビの中でしか見たことのない “光” が、

何の前触れもなく、目の前に現れたのだ。

声をかける暇も、勇気もなかった。

彼女は1階に着くと同時に、タクシーへと駆け出していった。

昭和のスターの、

目も眩むような一瞬の輝きだった。

まるで風のように若者の胸に火を灯す。

築地の生臭い朝と、

勝鬨橋の潮風と、

フォークリフトの恐怖と、

黒皮カジキの重さ。

そんな日常のただ中に、

突然差し込んだ“異質な光”。

あの一瞬の眩しさは、

今でも忘れられない。

――――――――――――――――

だが、昭和の光は芸能界だけにあったわけではない。

私の前には、

もうひとつの“巨星”が現れることになる。

それは、

彗星とは違う、

重力を持った星だった。

 - オールバッカス物語