第5話:トドメの1発(後編)
1本目終了後の休憩。
バックスリーダーであり、主務も兼任する“スーパーマン”千葉さんの指示が飛ぶ。
2本目は、フォワードのドンキーズ・水落さんがスタンドオフに入り、
得意のキックと内への切り込みでフォワードを呼び込む作戦に出るという。
もちろん、私も出場。
夢中でボールを追いかけた。
—
水落さんのキックは正確だった。
前へ前へと陣地を押し上げる。
フォワードは“下がりながら走る”のが一番きつい。
だからこそ、前へ出られるキックはありがたい。
さすが水さん、わかってらっしゃる。
前へ出るたびに勢いがつき、
呼吸も合い、
モールをドライビングする余裕すら出てきた。
調子は上がったが、
まだ1本先行されたまま2本目が終了。
—
そして3本目。
このまま負けるわけにはいかない。
皆の想いがひとつになり、パワー全開。
フォワードラッシュで、
我が元バッカスの松本・平田が立て続けにトライ。
勢いが完全にこちらへ傾いた。
そして、私にも敵陣でボールが回ってくる。
いつもなら突っ込んで自爆するところだが、
この時は妙に冷静だった。
ハンドオフが見事に決まり、
後ろを見ると、柔道出身の前田さん(先ほど脱臼を治したあの人)が
きっちりフォローしている。
反射的にパス。
前田さんはしっかりボールを抱え、
一直線にゴールへ飛び込んだ。
初トライ。
私より一回り上の前田さんが、
全身で喜びを表現する姿は、
見ていて胸が熱くなった。
—
そして——
トドメの1発。
敵陣ゴール前、相手ボールのラインアウト。
最後尾にいた私のところへ、
スッポ抜けたボールが飛んできて、
そのまま胸にすっぽり収まった。
一歩踏み込めば、もうインゴール。
あとはバタリと倒れ込むだけ。
「あらまあ」という感じのトライだった。
その後ミスで1本取られたが、
最終スコアは 7本対5本の快勝。
私のトライはおまけだったが、
前田さんのトライは本当に見事だった。
フロントローは、
スクラム・モール・ラックに終始して
なかなか目立たないポジション。
だが、忠実にフォローし続けた結果が
あの一瞬につながった。
—
試合後は銭湯で汗を流し、
駅前の中華屋を貸し切っての酒盛り。
明るいうちから延々と続いた。